転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「そのお菓子、そんなにおいしかったんですか?」

「ええ、二枚のパンケーキの間にあまーいクリームが挟んであって、こんな風に手で持っていただいたの。そのクリームをつけたお米のお菓子もいただいたことがあるわ」

 たぶん、それはどら焼きのことだ。豆のクリームというのは餡のことだと思う。

 基本的などら焼きの生地は、パンケーキの材料と同じ、小麦粉、砂糖、卵、ベーキングパウダーが焼くことができる。

 生地の配合を変えたり、蜂蜜や、牛乳を足したりと、作る人の工夫によって作り方は若干変わってくる。

 クリームをつけたお米のお菓子というのはよくわからないけれど、あんころ餅とか団子とかだろう。おはぎという可能性もある。

(こんなところで、和菓子が好きな人に会うなんて)

 もう和菓子の話をすることなんてないと思っていたから、皇妃の話にびっくりしてしまった。ミナホ国からの使者が国交を求めてやってきていたというのも、案外ヴィオラにとってはいい方向に話が進もうとしているのかもしれない。

「今後、ミナホ国とは国交を結ぶのでしょう? お友達と会えるかもしれませんね」

「……どうかしら。私のところにまでは、ミナホ国の使者は来ないと思うの」

 皇妃の言葉は、この皇宮で自身がどんな立場に置かれているのかをヴィオラにもわかりやすく説明してくれたものだった。

 リヒャルトが唇を結んで、顔から表情を消そうとするのがちらりと見えた。

「そういうものなんですね、ごめんなさい」

 リヒャルトがこんな顔を見せるのは珍しいと思ったけれど、それ以上にヴィオラが気になっていたのは。

 友人の思い出話をする時だけ、皇妃が嬉しそうな顔になることだった。

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