転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「今日も可愛く仕上げてもらったな」

「そうでしょう？　ニイファはとってもセンスがいいんですよ！」

　もし、自分がこの国から帰されるようなことになっても、ニイファだけは残れるように手配してもらおう。もう、ニイファの家族は誰一人として残っていないし、ザーラがニイファに危害を加える可能性がないとは言えないのだ。

「ヴィオラ様、今日の護衛は俺達に任せてください」

「あれ？　今日は、騎士さんも騎士団の服じゃないんですね」

　リヒャルトの侍従でもあるセスは、普段から騎士団の制服は身に着けていない。セスもまた、下級貴族の息子がふらりと街に出たと言って通りそうなくらいくだけた服装だ。その他にも一人ついてくれた騎士達も、似たような服装だった。

「あまり町中で騒ぎを起こしたくないんだ。だから、セス達も目立たないように警護してくれる」

「セス様。私はお供できませんが、ヴィオラ様をよろしくお願いします」

　警護の対象があまり増えてしまうのも好ましくないので、ニイファはこの部屋で留守番だ。丁寧に頭を下げて、セスにヴィオラのことを頼んでいる。

　クィアトール宮の前に用意された馬車も、皇帝一族の使う華やかなものではなく、上品ながらも、裕福なことを誇示しない、そんな造りのものだった。今日の視察はお忍びのようだ。

　市場の外れで馬車を降りたとたん、にぎやかな声が響いてくる。ここは馬車をとめて、御者が待っている場所になっているようだ。

「本当に、すごいたくさん人がいるんですね！」

　ヴィオラは目を丸くして周囲を見回していた。もっとすごい人混みは、ラッシュの時間などに経験しているけれど、それでもこの世界に生まれてからこれだけの人を見るのは初めてだ。

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