転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 人混みの中を並んで歩きながら、えへんと胸を張った。買ったものはすべて、馬車で待っている御者に届けてもらうように手配したので、これから先の視察も荷物が邪魔になるということはないだろう。

(……楽しい!)

 買い物を終えた後、改めて町中を散策することにした。

「……改めて見ても、本当にすごい! あ、あのお店に入ってもいいですか?」

 ヴィオラが指さしたのは、安価な雑貨を売っている店だった。

 ハンカチやリボン、レースと言った小物や、ガラス細工のブローチやイヤリングなど、庶民でも手の届きやすいアクセサリーが店先に並んでいる。

 それから、薬を入れておくためのピルケース、化粧直しのために使う手鏡、小さなポーチなど見て回るだけで楽しい。

「わあ、可愛い。んんっ、どうしようかな……」

 ヴィオラは、ガラス細工のアクセサリーを夢中になって見ていた。キラキラしていてとても素敵だ。熟練の職人達が作り上げたそれは、どれを買おうかとヴィオラを悩ませる。

 ヴィオラは王女であるから、本物の宝石も持っている。母の家から品は、さすがのザーラも取り上げることはしなかった。

 いずれ必要になることがあるだろうからと、この国にも持ってきてはいるけれど、宝石箱ごと金庫にしまったきり、一度も出してはいない。

 紛失しても問題にならない分、ガラス細工の方がヴィオラには安心だった。前世が庶民だったので、高価な宝石には慣れないのだ。

「何を買おうかな……迷う……! あ、ニイファにお土産買わなくちゃ」

 店先に並んでいるブローチの中から、どれにしようか選ぶ。丸くて小さなブローチにはきらきらとした紫色の飾りがついている。たぶん、アメジストをを模したものだ。

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