転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「……おいしい、です。でも、甘すぎて私はたくさんはいただけそうもありません」

 砂糖をたっぷり使った餡は甘すぎたみたいだ。

 日本で生活していた頃も、外国人の友達の中には小豆を使ったお菓子が苦手な人も多かったから、生まれ育った中で培われた味覚の違いというのはどうしようもない。

 皇妃とのお茶会にふさわしいドレスに着替え――けっこう面倒だけれど礼儀はきちんと守らなければ――できあがったばかりのどら焼きを可愛い籠に詰めてもらって出発した。

 通されたのは、気の置けない相手をもてなすための部屋だろうか。先日通された部屋とはまるで雰囲気が違う。

(まさか、こんな部屋に通されるなんて……)

 そこは、皇妃の趣味を色濃く反映したと思われる部屋だった。家具は、明るい白木を使った気取らないもの。フリルのついたレースのカーテンが窓にかけられている。

 部屋を彩るのは、皇族の住まいにふさわしい重厚な色合いではなく、ピンクや水色といった淡いパステルカラーだ。小花模様の布が張られたソファに並んでいるのは、ピンクのクッション。

 テーブルクロスは白い布の上に水色の布を重ねたもの。ティーテーブルの上に用意されているお茶のセットも、銀器ではなく花模様の描かれた磁器だ。

 そのテーブルに向かい合って座ったアデリナ皇妃は、ヴィオラに微笑みかけた。

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