どこかで夏が、笑っていた
そこで切り、大きく息を吸った蒼士。
「すみれのこと、好き。どうしようもなく、好き」
「……っ!?」
声が出ない。驚きも戸惑いも、なにもかも。私のなかに閉じこもったまんま。
「弦の好きな人がすみれじゃないって聞いて、ちょっとだけ安心した。ごめん」
すみれは弦のことが好きだろうけど。彼は続けた。
バレている。そう思ったけれど、特になんとも思わなかった。
本当は、弦を好きなわけではないのかもしれないと……少しだけ、思った。
なぜなら、ドキドキしないのだ。蒼士にバレていたと、わかっても、なお。
「すみれ、弦のことばかり話すよね。……弦が好きだって1番近くでみていたから、わかるよ。でも。
あいまいに笑うすみれをみてて、いまならこっちに傾いてくれるかなって……思った。最低で、ごめん」