どこかで夏が、笑っていた
相変わらず、蒼士は……よく見ている。
私は、恋に恋をしていただけで。
弦の、明るいところが好きなだけで。
これは、恋と名前がついていいものじゃなかったのかもしれない。
「……えっと、その……」
いまさら気づいた自分の気持ちを、なんと伝えていいのかわからない。弦を特別な意味で好きでなかった、というこの気持ちを。
思わず、逃げ出したくなる。
くるり。蒼士に背を向ける。
逃げたいけど、逃げた先には弦がいる。
逃げないと、蒼士がいる。
どうにもできない状況のなか、フリーズするほかない。