どこかで夏が、笑っていた



相変わらず、蒼士は……よく見ている。



私は、恋に恋をしていただけで。



弦の、明るいところが好きなだけで。



これは、恋と名前がついていいものじゃなかったのかもしれない。



「……えっと、その……」



いまさら気づいた自分の気持ちを、なんと伝えていいのかわからない。弦を特別な意味で好きでなかった、というこの気持ちを。



思わず、逃げ出したくなる。



くるり。蒼士に背を向ける。



逃げたいけど、逃げた先には弦がいる。



逃げないと、蒼士がいる。



どうにもできない状況のなか、フリーズするほかない。
< 11 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop