どこかで夏が、笑っていた
「いつもごめんなさい……大丈夫!?」
私もしゃがみこむと、デコピンをくらった。
「あだっ」
変な声が出る。
「変な声~」
わかりきったことをからかわれ、むっとした表情をあらわにした。……でもこれは、ただの嘘。
山田のあたたかさに、溺れてしまわないための。
「ぜんぜん平気。謝るなって、いつも言ってるでしょ?
それよりも、暑い」
山田は、長袖のワイシャツを着ている。
夏なのに。もう、暑いのに。
学校のグラウンドで、たったひとりだけ、腕を覆う白さ。
その理由は、私に向かう物理攻撃を山田がかばってくれるからで。
今日みたいに、野球ボールが飛んでくることだって……何回目かわからないくらいにある。
そのせいだ、と私は思っている。山田は、認めてくれないけれど。