どこかで夏が、笑っていた
「……なにしてるの」
突如、上から声がふってきた。
低いのに透き通るような声で、黒髪さらさらイケメンで、黒縁メガネで。
「蒼士、おはよ」
……多分、一般的に女子からモテるのは、こっちのタイプ。弦は、チャラいと言われているから。
でも、私は……弦がチャラいだけの人間じゃないと、知っている。一途なやつだと、強いやつだと。
それを本人に伝えないのは……私の、弱いところ。悪いところ。
はやく、嫌われてしまえたら。終わりがみえてきたら。
多分、とてつもなく楽だ。
それができないのは、まだ、諦めていないから。弦の本当の気持ちは、違うのではないか、と淡く思っているから。
そんなわけ、ないんだけど。ね。