どこかで夏が、笑っていた
「おはよ。……ラムネ、飲むぞ」
弦が無理やりに蒼士をつれていく。私もそこに、ついていく。
「すみれも、ラムネ飲むの?珍しい」
蒼士が首をかしげた。
「うん、まぁ」
あいまいに、答える。蒼士はそんな細かいとこも、よくみてる。
……私がラムネを普段飲まないのは、千穂が飲まないからだ。それが女子らしいのかなって、思ったり、思わなかったり。
千穂が飲んでないと、弦が、飲む?ってたずねる。私にもいつか、まわってこないかなって……期待していたんだと思う。
「弦が、ラムネ飲むから」
ぼそりとつぶやくと、蒼士は「俺には興味なし?」と笑う。
「……あっ!」
冗談めかして、ごめんごめんと繰り返す。
蒼士の名前を出さなかったのは、蒼士は千穂の好きな人で、私の手が届いてはいけない人だからだ。