どこかで夏が、笑っていた
*
3人ともそれぞれお会計を済ませ、また木陰に来たとき。
「すみれ」
とんとん、と蒼士の大きなてのひらが、私の肩に触れる。
私以外の女の子だったら……きゃあきゃあはしゃぐのだろうか。私がそうなるところは、想像できないけれど……。
「これ、あげる。ラムネ好きなんだよね?」
差し出されたのは、ひとつの飴玉。個包装のやつだ。
「あ、ありがとう……」
急にどうしたのかな。そう思っていると、早口で付け足された。
「すみれ、今日元気ないなって思って」
その優しさに、甘えたくなる。そんな弱さを、夏の暑さで溶かせたらいいのに。
バカなことを考えながら、お礼を言った。