どこかで夏が、笑っていた







3人ともそれぞれお会計を済ませ、また木陰に来たとき。



「すみれ」



とんとん、と蒼士の大きなてのひらが、私の肩に触れる。



私以外の女の子だったら……きゃあきゃあはしゃぐのだろうか。私がそうなるところは、想像できないけれど……。



「これ、あげる。ラムネ好きなんだよね?」



差し出されたのは、ひとつの飴玉。個包装のやつだ。



「あ、ありがとう……」



急にどうしたのかな。そう思っていると、早口で付け足された。



「すみれ、今日元気ないなって思って」



その優しさに、甘えたくなる。そんな弱さを、夏の暑さで溶かせたらいいのに。



バカなことを考えながら、お礼を言った。
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