どこかで夏が、笑っていた



わかるよ。それくらい。



ずっとふたりをみていたから、わかってる。



私は、弦が好きで。弦は、千穂が好きで。千穂は、蒼士が好きで。



蒼士の気持ちが、それだけが、わからないけれど。



「……いびつ……」



つぶやいてみて、これ以上にしっくりくる言葉はなかった。



「すみれ」



そんな私を見て、蒼士が呼んだ。声にのって、強い気持ちまで伝わってくるみたいに感じた。



具体的には言えないけれど、強い意志のような。



弦をその場に残して、私と蒼士は、ふたりで……駄菓子屋さんに、入った。



「あのさ、いま、こんなこと言うの……卑怯だってわかってるんだけど」
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