氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
息吹は台所で驚愕の光景を目の当たりにしていた。
如月の包丁捌きは見事なものであり、幼い頃にはつまみ食い以外一切台所に来ることがなかった子が…と絶句していた。
「如ちゃん…お料理練習したんだね。すっごく上手!」
「母様の教えは守ってきましたから」
――口調も随分やわらかくなった。
いつも喧々していて棘のあった物言いではなく、如月の努力と泉の献身に心から感謝をして、今度は朧に向き直った。
「朧ちゃん、新婚旅行はどうだった?」
「ええと……赤ちゃんを拾ってからその……」
揚げ団子をこねながら口を濁した朧にぴんときた息吹は、雪男の超がつく面倒の良さから察するに、ふたりして赤子にかまけて夫婦の時間を持っていないことにすぐ気付いてまな板をばんと叩いてふたりを飛び上がらせた。
「は、母様?」
「私!ちょっと雪ちゃんにお説教してきます!」
「待って待って!母様待って!大丈夫です!自分で対処しますからっ」
焦って引き留めた朧は、思い切り頬を膨らませている母が面白くて吹き出すと、団子を完璧な真ん丸にして満足しながら肩で息をついた。
「でも氷雨さんすごく優しいから…楽しかったです」
「ほう、どう優しかったのか言ってみなさい」
如月ににたりと笑われて迫られた朧がまた焦っていると、息吹は普段氷雨のことを‟お師匠様”と呼んでいる朧が氷雨の真名を呼んでいることに、内心きゅん。
「ふうん、雪ちゃんの真名呼んでるんだね。素敵!」
ふんわり笑った末娘があまりにも可愛らしく、息吹と如月は手を拭きつつこぞって朧の頭を撫で回した。
「あの赤ちゃんのお世話も大切だけど、雪ちゃんとの時間を大切にね。雪ちゃん意外と小さな子みたいな駄々こねる時があるから拗ねらせると長いよ」
「はい、重々承知です」
笑い声が満ちた。
ああやっぱりここは安心する場所だなあと心が軽くなって、母と姉と三人で大量の料理をせっせと作り続けた。
如月の包丁捌きは見事なものであり、幼い頃にはつまみ食い以外一切台所に来ることがなかった子が…と絶句していた。
「如ちゃん…お料理練習したんだね。すっごく上手!」
「母様の教えは守ってきましたから」
――口調も随分やわらかくなった。
いつも喧々していて棘のあった物言いではなく、如月の努力と泉の献身に心から感謝をして、今度は朧に向き直った。
「朧ちゃん、新婚旅行はどうだった?」
「ええと……赤ちゃんを拾ってからその……」
揚げ団子をこねながら口を濁した朧にぴんときた息吹は、雪男の超がつく面倒の良さから察するに、ふたりして赤子にかまけて夫婦の時間を持っていないことにすぐ気付いてまな板をばんと叩いてふたりを飛び上がらせた。
「は、母様?」
「私!ちょっと雪ちゃんにお説教してきます!」
「待って待って!母様待って!大丈夫です!自分で対処しますからっ」
焦って引き留めた朧は、思い切り頬を膨らませている母が面白くて吹き出すと、団子を完璧な真ん丸にして満足しながら肩で息をついた。
「でも氷雨さんすごく優しいから…楽しかったです」
「ほう、どう優しかったのか言ってみなさい」
如月ににたりと笑われて迫られた朧がまた焦っていると、息吹は普段氷雨のことを‟お師匠様”と呼んでいる朧が氷雨の真名を呼んでいることに、内心きゅん。
「ふうん、雪ちゃんの真名呼んでるんだね。素敵!」
ふんわり笑った末娘があまりにも可愛らしく、息吹と如月は手を拭きつつこぞって朧の頭を撫で回した。
「あの赤ちゃんのお世話も大切だけど、雪ちゃんとの時間を大切にね。雪ちゃん意外と小さな子みたいな駄々こねる時があるから拗ねらせると長いよ」
「はい、重々承知です」
笑い声が満ちた。
ああやっぱりここは安心する場所だなあと心が軽くなって、母と姉と三人で大量の料理をせっせと作り続けた。