氷雨逆巻く天つ風の夜に【完】
久々に熱を与え合い、氷雨はぐらつく視界に苦心していた。
聴覚は朧の上げる声で鼓膜が振動しておかしくなり、視覚は朧の奇跡的な肢体で眩暈を覚えてぐらつき、朧に触れる度、指先はちりりと稲妻が走ったような痛みにも近いものを感じて、もはや氷雨は自身の感覚が分からなくなっていた。
「汗が引かねえんだけど」
「私も…」
抑えきれなくなった衝動で何度も朧を抱いた後ようやく解放すると、朧もぐったりして肩で息をつきながら布団をかき抱いた。
「新婚なのに夫婦の時間を持てないっておかしいよな。俺もいつも暇なようで忙しいからお前が満足するまで傍に居てやろうって思ってたけど、あいつにお前を奪われたな」
――そもそも氷雨の一番になれるように幼い頃から努力して努力して…ようやく願いが叶ったのに、呆れられては本末転倒だ。
第一確かにあの赤子は我が子ではないし、もし氷雨との子だったら…と仮想して可愛がっていた気がする。
だがそうすることで氷雨との距離ができることは本意ではなく、頬に伝う汗を拭っている氷雨の手を掴んだ。
「私っ、ちゃんと節度を持って接します。氷雨さんに嫌われたくない…」
「ははっ、嫌ったりしねえよ。そうやって自覚してくれたんなら言うことないし、大体こうして子作りに励まないとできるもんはできないぜ」
「そうでよね、じゃあまた…明日も明後日も可愛がって下さいね?」
「もっちろん」
布団で一緒に簀巻きにした朧をむぎゅっと抱きしめた氷雨は、嬉しそうに笑っている朧の腹に手をあてた。
「早くここに宿るといいな」
「だから頑張って下さいね」
「ははは…頑張ります…」
疲れ果てたふたりはその後吸い込まれるように眠りに落ち、思い切り寝坊した。
聴覚は朧の上げる声で鼓膜が振動しておかしくなり、視覚は朧の奇跡的な肢体で眩暈を覚えてぐらつき、朧に触れる度、指先はちりりと稲妻が走ったような痛みにも近いものを感じて、もはや氷雨は自身の感覚が分からなくなっていた。
「汗が引かねえんだけど」
「私も…」
抑えきれなくなった衝動で何度も朧を抱いた後ようやく解放すると、朧もぐったりして肩で息をつきながら布団をかき抱いた。
「新婚なのに夫婦の時間を持てないっておかしいよな。俺もいつも暇なようで忙しいからお前が満足するまで傍に居てやろうって思ってたけど、あいつにお前を奪われたな」
――そもそも氷雨の一番になれるように幼い頃から努力して努力して…ようやく願いが叶ったのに、呆れられては本末転倒だ。
第一確かにあの赤子は我が子ではないし、もし氷雨との子だったら…と仮想して可愛がっていた気がする。
だがそうすることで氷雨との距離ができることは本意ではなく、頬に伝う汗を拭っている氷雨の手を掴んだ。
「私っ、ちゃんと節度を持って接します。氷雨さんに嫌われたくない…」
「ははっ、嫌ったりしねえよ。そうやって自覚してくれたんなら言うことないし、大体こうして子作りに励まないとできるもんはできないぜ」
「そうでよね、じゃあまた…明日も明後日も可愛がって下さいね?」
「もっちろん」
布団で一緒に簀巻きにした朧をむぎゅっと抱きしめた氷雨は、嬉しそうに笑っている朧の腹に手をあてた。
「早くここに宿るといいな」
「だから頑張って下さいね」
「ははは…頑張ります…」
疲れ果てたふたりはその後吸い込まれるように眠りに落ち、思い切り寝坊した。