秀才男子は恋が苦手。
「衛藤が好き過ぎて辛かった、一緒にいるのが」
「…っ!」
「近くにいると触りたくなるし、…キスしそうになるし」
「!!」
「自分が自分じゃなくなるみたいで、怖かった」
「つ、つるん…!」
衛藤の顔がみるみる真っ赤になって、まるで茹蛸みたいだ。
「…衛藤は?」
逃げようとする衛藤の手に、グ、と力をこめた。
衛藤が心なしか赤く潤んだ瞳で恨みがましく俺を見る。
「…ず、ずるいよ…急にこんな…」
「ごめん。だけど離してやれない。
…衛藤の答え、聞かせて」
衛藤がグ、と唇をかんで、キョロキョロと視線を彷徨わせて、チラ、と俺を上目遣いに見つめて
「っ!」
チュ、と一瞬、掠めるように触れた唇。
「………は?」
…今、何が…
茫然とする俺に、衛藤がしてやったりの顔で口角をあげた。でもその顔は、相変わらず真っ赤だ。
「…さぁ、問題です。この行動が意味する、登場人物の心情について答えなさい」
「…俺現代文は苦手なんだけど」
「知らない。つつるんばっかり急にドキドキさせてきて、ズルいんだもん」
拗ねたように唇をとがらせる衛藤。
…きっと知らないだろう。こんな何でもない仕草にも、俺がとんでもなくドキドキさせられてるってこと。