秀才男子は恋が苦手。
「え…」
分かりやすく曇る衛藤亜衣の顔。
「今日はもう遅い。夜しっかり眠ることも重要だ」
「でも…」
「いつも何時に来るんだ?ここ」
パッ!と衛藤亜衣の表情が明るくなる。
ふ。分かりやすい奴。
「えっとね、9時くらいには来れるよ!」
「わかった、じゃぁそのくらいに」
送る、と言って歩き出したが、一向についてこない衛藤亜衣。
振り向くと、立ち上がったままポカン、とした表情で立ち尽くしている。
は?
「…何をしている?」
「だ、だっていいい今、つつるん、送るって…」
「? それがどうした」
夜遅くに女子を家まで送るのは普通の行為だろ。
首を傾げる俺に、衛藤亜衣はバタバタと高速でトレーやらジュースの容器を片付けると、俺の隣に並んだ。
「ありがとっ!つつるん!!」
そしてニコッと嬉しそうに笑う。
「…っ」
ドクン、と心臓が波打った。
だけどそれは一瞬のことで、すぐに通常の心拍に戻る。
「どうしたのつつるん?」
「…いや、何でもない」
なんだ?さっきから少し様子がおかしい。
もしかしてあまり自覚はないが、体調が悪いのだろうか。
よし、今日は家に帰ったら早く眠ろう。