秀才男子は恋が苦手。
秀才男子は動悸がする。
それから衛藤亜衣に勉強を教えてやる毎日が始まった。
どうやら本当に今まで勉強してこなかったらしい。基礎中の基礎すら分かっていないことが多々あった。
だけど、飲み込みは悪くない。むしろ良い。
驚くほどのスピードで様々な公式、漢字、年表等々を覚え理解していく。
まるで乾いたスポンジが水を吸収するかの如く。
「ほら、このXにこの3を代入すれば…解けただろ?」
「あっ…ほんとだ!すごーい!」
うんうんと何度も頷く衛藤。どうやら猛烈に感動しているらしい。
「やっぱ天才だね、つつるんはっ!」
パッと顔を上げた衛藤と視線がぶつかった。
一つの机に向かい合って、一つの問題集を覗き込んでいるわけだから当然その距離は近い。
いつものようにニコニコ笑う衛藤に、ドクンと心臓が音をたてた。
って…まただ。
衛藤と一緒にいると、時々、こういった現象が起こる。
最近、せっかく頭痛は治まってきたのに、今度は謎の動悸だ。
…どこか悪いんじゃないだろうな。