秀才男子は恋が苦手。
「私、水持ってるよ!!」
そして、ちょっと待ってて!とパタパタと自席の方に走り、飲みかけのペットボトルの水を持ってきた。
「はい!どーぞ!」
そして、何の戸惑いもなくそう言って、俺にペットボトルを差し出す。
…飲みかけ、ということはつまりは間接キスということだ。
黙ったままの俺に対し、衛藤亜衣はニコニコとして俺を見つめている。
どうやら俺の杞憂など全く思いもよらないようだ。
「…遠慮する」
「えー!何でつつるん!」
彼女を押しのけ歩みを再開した俺を、不思議そうな声が追いかけてきた。
あぁ…やっぱり、頭が痛い。
ズキズキと酷くなる痛みを感じながら、俺は振り向いた。
「言っておくが“つつるん”ではなく、“筒井”だ」
「えー!つつるんは、つつるんじゃん!」
ダメだ、どうやら話が通じないらしい。