秀才男子は恋が苦手。
その日塾が終わるのが遅くなってしまった俺は、早足でカフェまでの道を歩いていた。
早足で歩きつつ、腕時計に視線を落とす。
いつもより30分以上遅れてしまっている。
ラインも送ってあるが、いまだに既読すらつかない。
…何かあったのか?
カフェに入ると、いつも通り一番奥の窓際の席に座っているのが見えた。
ホ、と胸を撫で下ろし、駆け寄ろうとした瞬間、気付く。
衛藤に話しかける男の存在に。
衛藤の表情はこちらに背を向けていて分からないが、男は何やら馴れ馴れしく衛藤に話しかけている。
俺の頭に、マックでチャラい男達に絡まれていた衛藤の姿がフラッシュバックした。
ポン、と衛藤の頭に手をのせる男。
瞬間、俺の中にどうしようもない焦燥感と、フツフツとした怒りのようなものがこみ上げる。
気付いたら俺は、その男の肩をつかみ思い切り衛藤から引き剥がしていた。
「うわっ!」
無理やり振り向かされた男が、驚いた顔で俺を見る。
「…お前。そいつに触んじゃねぇ」