秀才男子は恋が苦手。
は、と男が息をのんだ。
そしてまじまじと俺の顔を見つめたと思ったら、
「筒井くんっ!?」
ガシッと肩を掴み直される。
…は?
「君、いつもテストで学年トップの筒井くんだよね!?うわー!光栄!こうして筒井くんと握手できるなんて〜!!」
そう言って今度は俺の両手を取り勝手に握手し始める男。
…な、なんなんだ!?この男。気持ち悪いぞ。ていうか、なんだか見覚えもあるような…
「俺のこと分かんない?6組の伊東敦っていうんだけど!」
伊東敦…?
そこで俺ははじめて、あぁ、と思い当たった。
伊東のことは知っている。
確か弓道部で、実力もあるらしく全校集会でよく表彰されているのを見る。
しかもよく見れば、いやよく見なくとも伊東はうちの高校の制服を着ている。
こんなことにも気付かないなんて。
…俺、どんだけ慌ててたんだ?
「つつるん、なんか息切れてるけどそんなに慌ててきたの?まだ9時になってないよ?」
その時、衛藤が俺を見上げて呑気そうな声で言った。