秀才男子は恋が苦手。
「…うん、わかった」
衛藤は真剣な顔で頷くと、よし!と早速参考書の1ページ目を広げた。
「せっかくつつるんがくれた参考書、絶対完璧にしてみせる!」
「…おう、がんばれ」
「うん!!」
参考書を熟読し始める衛藤。
教室の中だけでは分からなかった。
衛藤ってこんな真剣な顔で勉強する奴だってこと。数学が苦手なこと。そのくせ、すぐ背伸びしようとすること。
…勉強を始める前、右側だけ髪を耳にかけること。
…あいつは…知ってるのか?
「…今日本屋で伊東に会った」
無意識のうちに、そんな言葉がこぼれ出ていた。
キョトンとした衛藤が顔を上げる。
「え?敦に?」
「衛藤のことは何でも分かってるから何かあったら聞いてくれだってさ」
「はは、まぁーそうだね!食べ物の好き嫌いも恋愛遍歴も全部知られちゃってるからなぁ」
………ふーん。