秀才男子は恋が苦手。
秀才男子は勝負をする。
「おい筒井、何飲んでんだよ」
昼休み後の5時間目は体育で、体育館でバスケをするらしい。
体育館の隅に座りパックのココアを飲む俺を見て、不思議そうな顔をする千葉。
「見れば分かるだろう。ココアを飲んでいる」
「お前ココアとか好きだっけ?」
「いや全く飲まない。ただココアはフラバノールを多く含んでおり、神経細胞の再生と新生が促されるからな」
「は?何言ってんの?」
突然の聞き慣れない単語に千葉が嫌な顔をする。
「つまりは老化予防だ」
「はぁ?老化ぁ?そんなの高校生が気にすることじゃねーだろ」
「いやそうでもない」
ジュ、とココアが底をついた音がした。
俺は丁寧にそれを折りたたむ。
「最近自分で自分の感情、行動を理解できないことが多々ある。老化の前兆かもしれない」
「はぁ…?」
わけが分からない、と言いたげな千葉を置いて、俺は体育館の入り口にあるごみ箱に向かう。
綺麗に折りたたまれたココアのパックを捨てたところで、ちょうど入って来た人影。顔を上げると
「あれっ、筒井くん!?」
「………伊東」
ジャージ姿の伊東が、体育館シューズが入った袋片手に立っていた。