秀才男子は恋が苦手。
「さっきの言葉、本気?」
コートの真ん中に立ち、5人ずつ整列する。
俺の前に立つ伊東が、ムカつく笑みをたたえたまま聞いてきた。
「本気だよ。だからお前も本気で来いよ」
「筒井くんがスポーツにこんなに熱くなるなんて意外だなぁ」
はは、と軽く笑った伊東が、次の瞬間には笑みを消して真っ直ぐに俺を見た。
「言っとくけど俺、勝負には拘る主義だから。勝たせてもらうよ」
「…のぞむところだ」
ビーッとブザーが鳴る。
ジャンパーは千葉と伊東。
ボールをタッチしたのは、
「うぉっ…りゃぁぁぁ!!」
なぜか物凄い声を上げている千葉。
ボールはまっすぐに俺のところへ。
よし、幸先いい。このまま攻めるぞ。
ドリブルし始めた瞬間だった。
「…っ」
「悪いね筒井くん」
スッと横から伸びてきた腕にボールを奪い取られる。
伊東はそのままドリブルで一気に俺たちのゴール前まで攻め込むと、綺麗なレイアップシュートを決めた。
…速い。上手い。…想像以上だ。
それからもほぼ伊東の独壇場のままゲームは進み、あっという間に第1ピリオドは終了した。