秀才男子は恋が苦手。
千葉は一ヶ月ほど前に、11年片想いした年下の幼なじみとの恋を実らせ付き合い始めたばかりだ。
それからの千葉の浮かれようはもう凄まじく、鬱陶しくなってきた俺は基本的に無視のスタイルを貫いている。
今日もそのスタイルで静かに自分の世界に没頭し始めた俺を
「つつる〜んっ♪」
…出た。
俺はゲンナリとして本を閉じた。
千葉が、おっ、と楽しげに目を見張ったのが分かる。
そういえば、衛藤亜衣がこうして俺に付き纏うようになったのも、ちょうど1ヶ月ほど前からだ。
それまで特に関わりもなかったはずの衛藤亜衣がある日突然、「勉強教えて!つつるん!」と俺に迫ってきたのだ。
“つつるん”という不可解なあだ名の由来については、恐ろしくて未だに聞いていない。