秀才男子は恋が苦手。
「っくそ」
床に座り込み俺は思わず膝を叩いた。
何が手加減はしなくていい、だ。
こんなんじゃ、例え手加減されたとしても勝てたのか分からない。
情けない…
「まさか筒井がこんな無謀な勝負する奴だったとはなー」
その時、千葉がドカッと俺の隣に座り込み言った。
「亜衣ちゃんに良いところ見せたいからだろ?」
ん、と千葉が顎で指した方向を見ると、ゲームの順番待ちをしているらしい、衛藤が少し不安気な表情でこちらを伺っていた。
「…別にそういうわけではない」
「何今更強がってんだよっ!」
バシッと思い切り俺の背中を叩くと千葉は立ち上がって軽く伸びをした。
「…痛いんだけど」
「いいか筒井!バスケっつーのはチーム戦だ。で、お前のチームには俺がいる」
振り向き、ニッ、と笑う千葉。
「言ったろ。伊東をぶっ飛ばすって」
その時、俺は生まれて初めて、そしておそらく最後であろう…千葉が少し、ほんの少し、1ミクロくらい、かっこよく見えた。