秀才男子は恋が苦手。
よく考えたら分からないことばっかりだ。
何でこんなに伊東がムカつくのかも。何でこんなに無謀な勝負やってんのかも。何でこんなに、必死なのかも。
だけど。
“ま、一番近い存在ではあるよなー!”
…負けたくない。そう思った。
……何に?
「筒井!」
僅かな敵の間をついて千葉からのパス。
それを受け取った俺は、ドリブルで素早くゴール下までかけあがる。
すかさず追いついてくる伊東。俺の前に立ち塞がる。
負けたくない。伊東に、負けたくない。
ジャンプしようとした瞬間。俺の右足首が不自然な方向に曲がり。
「っ!」
ズキッとした痛みに、俺はバランスを崩してそのまま床に倒れこんだ。
「筒井ぃぃぃぃいいいい!!!」
千葉の絶叫が、体育館中に響き渡った…。