秀才男子は恋が苦手。
「れっ…レアンアイ…ヘンレキ!?」
なぜか片言のような口調でオウム返しする衛藤。
「そう。衛藤って彼氏とかいんの」
「かれっ…カレシ!?い、いいいないよそんなのっ」
「…ふーん」
まぁ、これだけ衛藤と一緒にいて、男の影なんて感じたことなかったからな。まぁ嘘ではないんだろう。
「じゃぁ好きな奴は」
「は…はぁ?」
「好きな奴いんの?」
「すす、好きな奴って」
「伊東は?」
「あ、敦は、ただの幼なじみでっ…」
じ、と衛藤を見つめていると、衛藤がそれに耐えきれなくなったみたいに立ち上がった。
「て、ていうか、突然どうしちゃったのつつるんっ!何でそんなこと急に…!」
「ちゃんと答えるって言っただろ」
グイ、と背を向けた衛藤の腕をつかむ。
「…わ、かったよ」
真っ赤な顔して振り向いた衛藤が、覚悟を決めたように頷いてもう一度パイプ椅子に座り直した。
「す、好きな奴は、いない」
「…本当?」
「ほ、ホントだよっ!」」
「…ふーん」
…何でだろう。なんか、体中の力が抜けた。
ほ、と脱力した俺を見て、衛藤が不思議そうに聞いてくる。
「そ、そんなこと…何で知りたかったの?」
「………それは」
“食べ物の好き嫌いも恋愛遍歴も全部知られちゃってるからなぁ”
「負けたくなかったから」
「…え?」
「それだけだよ」