秀才男子は恋が苦手。
「…それだけ、って…」
腑に落ちなさそうな顔をしている衛藤。
ふ。まぁそうだよな。俺だって、自分で自分のことがよく分かっていないのだから。
「…幻滅したか?」
「え?」
「自分から勝負吹っ掛けっといて、結局歯も立たずに怪我なんてして。…カッコ悪いだろ」
たぶん嫌われただろうな。…いや、違うか。嫌うも何もない。衛藤にとって、俺なんて最初から別に、好きでも何でもなかったんだから。
…なのに何でこんなに、胸が痛いんだ。
「つつるんって…頭良いけど、バカだね」
「…は?」
顔を上げると、衛藤がおかしそうに笑っていた。
「幻滅なんてするわけないじゃん?かっこよかったもん、つつるん。普段はクールなつつるんが一生懸命バスケしてんの…めちゃくちゃ、かっこよかった」
瞬間、ストン、と、俺の中に何かが落ちた。
少し違うけど、ずっと分からなかった問題がやっと解けたときのような、それに近い感覚。
最近分からなかったこと、今やっと全部、分かった気がする。
謎な動悸の意味も。何で伊東にあんなに負けたくなかったのかも。
何で衛藤が伊東の話をしたとき、イライラしたのかも。
衛藤に好きな奴がいないって分かったとき―――何で、ホッとしたのかも。
いつか千葉に言われた言葉が頭に響く。
“筒井お前、亜衣ちゃんに恋しちゃったんだよ”
「…衛藤。俺…」