秀才男子は恋が苦手。
秀才男子は独占したい。
「筒井~!聞いてくれよ!今朝夏海が…って!お前それ、何読んでんの…!?」
朝。いつも通り俺よりも17分遅く登校してきた千葉が(俺は時間に余裕をもって行動することがモットーな為朝礼の30分前には登校している)俺の読んでいる本を見て眉をひそめた。
「ロミオとジュリエットって…」
「別にいいだろ。純文学だ」
「お前文学なんて読まねーじゃん!いつも物理だの数学だのよく分かんねー本ばっかで!」
「うるさい黙れ散れ」
確かに俺は文学…というか、創作物はあまり読まない。苦手だし。
でも昨日、帰り道に立ち寄った古本屋で、なぜか―――これを手に取っていたんだ。
「…よく分かんねーけどまぁいいや!
実は夏海がさぁ、今度の土曜日デートしたいんだってさ俺と!なぁ、夏海から誘ってくるとか可愛すぎてヤバ…」
「黙れと言ったはずだが」
静かにページを捲る。いつも鬱陶しいが、ここまで千葉を鬱陶しいと思うことも中々ない。
「…おいおい」
一瞬頬をひきつらせた千葉が、気を取り直すように勝手に肩を組んできた。
「昨日からすっげー機嫌悪いけどどうしちゃったわけ?
バスケのことまだ気にしてんのかよ。あんなのせいぜい体育だろ?マジになんな、って…」
バタンッ。
勢いよく本を閉じ、立ち上がった。千葉が息をのむ。
「そ、そんな怖い顔してどうしたんだよ」
「…千葉」
「お、おう!」
「……トイレ行ってくる」
「お、おぉ…」
ダメだ。昨日のアレが
“き、気になる人なら、いるよっ!”
…頭から離れない。