秀才男子は恋が苦手。
「…じゃぁ次、この問題解いてみて」
「うん!」
真剣な表情で問題を解き始める衛藤。
夜。俺と衛藤は、いつもと同じカフェで、いつも通り勉強していた。
三年の秋。
いくら志望校がA判定で余裕の俺とはいえ、さすがに根を詰め始めなければダメな時期だ。というわけで自分の勉強道具も持ち込んでいるわけだが…どうしたものか。
全然まったく、集中できない…!
「…気になる」
「ん、何が?」
パッと顔を上げた衛藤と目が合って、ようやく我に返る俺。俺としたことが、心の声が漏れるとか…ありえない。
でも仕方ない。俺は受験生だというのに、この目の前の問題より何より
…衛藤の“気になってる人”が、気になって仕方ないんだから。
「…何でもない。というかここの証明、間違ってる」
「え、うそ!?」
「ここはまず、加法定理を使って…」
モヤモヤする。どんな問題を解けない時よりも。