秀才男子は恋が苦手。
「わ、悪いっ…」
慌てて衛藤の肩を離して距離を取る。
「う、ううん、わ、私こそ…!」
俯いた衛藤がプルプルと首を振る。
…聞こえるわけないよな。この心臓の音、衛藤に。
「あ、ああ、あの!」
突然衛藤が大声を出した。
「な、何」
「き、今日はここでもう大丈夫!もう家、すぐそこだし…!じゃ、また明日!」
そして俺の返事も待たずに駆け出した。
……もしかして
怖がらせた?
「…くそ」
昔から何でも器用にこなす方だった。
勉強は人並み以上にできたし、運動神経だって悪くない。手先だってまぁまぁ器用。だけど。
「わかんねー…」
「で、俺のとこに来たわけ」
屋上。フェンスに寄り掛かった伊東が、呆れ顔で俺を見る。
「亜衣の気になる人…ねぇ。もしかして…俺!?」
「いやその可能性はないな。お前のことはただの幼なじみって言ってたし」
「あっそう」
ふー、と伊東が息を吐き出す。
「残念ながらその解答は俺も知らない。幼なじみだからってそう何でも話すわけじゃないし」
「…ふーん」
「なんかあからさまに嬉しそうな顔してるな」
苦笑する伊東。…俺、存外思ってることが顔に出るタイプだったのか。