秀才男子は恋が苦手。
「っおい!!」
慌てて割って入り、衛藤から男の手を強引に引き剥がす。
「いって、何だよ急に?邪魔なんだけど」
「邪魔なのはそっちだろ」
「はぁ?突然何なの、お前?」
「俺は彼氏だけど?コイツの」
自然と口から滑り出ていた。
男は不機嫌そうに目を細めた後、チッと舌打ちをして、
「あっそ。彼氏持ちなら早く言えよな、めんどくせ」
…案外、素直に引き下がっていった。
ホッとして、すぐに後ろの衛藤を振り返る。
「大丈夫か衛藤!?何かされてないか!?」
「だ、大丈夫だよつつるん。ありがとう、助かった」
「…無事でよかった」
胸を撫で下ろしながら、俺は前にもこんなことがあったな、と思い出していた。
あの時は確か、塾の帰りに偶然マックで男たちに絡まれている衛藤を見つけて。
見捨てるのは後ろめたいと、警察にいつでも通報できるように用意してから声をかけた。
でも今は
そんな余裕、全くなかった。
「…つつるん?ごめんね嘘までつかせちゃって」
衛藤が15センチ下から、申し訳なさそうに言う。
「…は?」
「彼氏なんて嘘までつかせちゃって、ごめん」
……嘘、か。
俺的には
嘘つこうなんて考え、まるでなかったんだけど。
「じゃ、帰ろ…」
「衛藤」
歩き始めようとした衛藤の腕をグイ、とつかんだ。さっき衛藤が、見知らぬ男につかまれていたそこを。