秀才男子は恋が苦手。
ボッと顔を赤くした衛藤がピキッと固まった音がする。
ん?何でこんな急に赤く…って、あぁッ!
そこで俺はようやく、自分がしでかした行動に気付いた。
高速で衛藤の頬から手を離した――その衝撃で、紅茶が入ったティーカップに腕が当たり、ひっくり返してしまう。
「熱っ!」
「だっ、大丈夫つつるん!?」
もう、本当何やってんだ俺は――。
「衛藤かからなかったか?紅茶」
「う、うん。私は大丈夫だけど…」
俺は大丈夫じゃない。
机の上にこぼれた紅茶を布巾で拭きながら、ドクドクドクと心臓が鳴りやまない。
はじめて触れた衛藤の頬は
柔らかくて
温かくて
いつまでも触れていたいような―――
って俺、何考えてんだ!?
「ご、ごめん衛藤。勝手にさ、触ったりして…嫌だった、よな。別にあの断じて深い意味は…」
「い、嫌じゃないよ」
慌てて言い訳をはじめた見苦しい俺を、励ますように衛藤が机を拭く俺の手を握る。
「っ!?」
「嫌なわけないじゃん」
…やめろ。
勘違い、しそうになる。
「…ごめん」
俺は衛藤の手から自分の手を引き抜いて、立ち上がった。
「ちょっと布巾…洗ってくるわ」
意気地のない俺は、逃げるように部屋を出た。