秀才男子は恋が苦手。
「おっす筒井~!なぁ聞いてくれよ!今日の夏海の寝癖がめっっちゃ可愛くて…って、また変わったもん読んでんなぁ」
ドカッと登校するなり、いつも通り俺の前席(千葉の席ではない)に腰をおろす千葉。
「は?」
「“日本の戦国武将100人”?お前歴史とか好きだったっけ?」
「…え?」
自分の読んでいた本のタイトルを確認した俺は唖然とした。
俺…いつの間にこんなものを…!?
「いや、違う…多分あれだ。今朝寄ったコンビニで多分、買ったんだ」
「は?多分?自分のことなのになんか曖昧だな。変なの」
…変。たしかに最近の俺はずっと変だ。
“戦国武将って、なんか漢!!って感じでかっこいいじゃん?”
あの衛藤の言葉が頭が離れなくて、無意識にこんなに興味のないジャンルの本を買ってしまうなんて…俺は…
「…思ったより重症なのかもな」
「は?何が?」
「…何でもない」
俺は戦国武将の本を閉じると、机の中にしまった。代わりに数学の参考書を取り出す。
「千葉、お前も彼女の寝癖の話なんてどうでもいいから勉強しろよ。中間近いだろ」
「だっ…おま!?夏海の寝癖がどうでもいいだと!?んなわけねーだろ!?」
んなわけんねーのはお前だけだよ、千葉。
ギャアギャア反論している千葉を聞き流しながら、俺の視線は自然と衛藤の方へ。
楽しそうに友達と話している衛藤は、今日も楽しそうだ。