秀才男子は恋が苦手。




放課後。俺は教室からぼんやりグラウンドを眺めていた。


グラウンドでは半分を野球部、もう半分をサッカー部が使い練習している。


3年生が引退した後の部活はその分人数が少ない。

何人か練習に参加している3年生が見えるのは、スポーツ推薦などで既に受験が終わっている生徒だろう。


「サボりか?塾」


その声に振り向くと、誰もいなかったはずの教室の入り口になぜか、帰ったはずの千葉が立っていた。


「…何だよ。まだいたのか」

「数学の教科書、忘れたから取りに来ただけだよ」


あーあ、受験生じゃなければ夏海の部活終わるの、出待ちするんだけどなっ!などとぼやきつつ、自分の机の中から教科書を取り出す千葉。


「あー…彼女何部なんだっけ」

「家庭部。週2だけどな」

「あー、なるほど」

「で、お前は?」


数学の教科書をカバンにしまい、なぜか目的は果たしたはずなのに俺の隣まで来て一緒にグラウンドを見下ろす千葉。


「…別にサボりじゃない。今日塾は休みだし」

「ふーん?塾がない日はとっとと図書室で勉強か、帰ってただろ?いつも。こんなところでたそがれちゃって、どうしたんだよ」

「…別に、どうも」

「お前さぁ。亜衣ちゃんのこと大好きだろ?」





「…は?」




こいつには脈絡というものがないのか。


突然放り込まれた衛藤の話題にたじろいたのはバレバレだったらしい。


ニ、としてやったりの笑みを見せる千葉。



「ふ。分かりやす」

「お前な…」




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