秀才男子は恋が苦手。



こんな邪な思いが、普通の感情!?


衝撃を受ける俺に、千葉がやけに芝居がかった調子で続ける。



「俺なんて、この邪な思いを何っ…年、我慢したことか!!」


ふっ…と遠い目をした千葉は、一転クルリと振り向き俺の両肩をガシッとつかんだ。


「安心しろ筒井!お前はただの健康な男だ!自信持て!」

「自信って…何のだよ」


なんだか暑苦しい千葉の手を無理矢理引き剥がした。


「俺は、自分本位な感情で…絶対衛藤を傷つけたり、したくないんだよ」

「自分本位って、そんなの亜衣ちゃんの気持ちも聞いてないくせに分かるのかよ」

「…分かるよ」


だって衛藤には他に気になる人…好きな奴が、いるんだから。

なんとも思ってない男に近づかれたり、触られたり…気色悪いだろ、絶対。



それに何より、俺は衛藤に


―――嫌われたくない。



好きでいたくないのに、好きで。嫌われたくないのに、触れたくて。



「…正直、最近辛い」

「え?」

「衛藤といるのが…辛い」



バタバタッ…



その時、何か本が落ちたような音がして、振り向くと教室の入り口で衛藤が立ち竦んでいた。


衛藤の足元には俺があげた、数学の参考書。



「…衛藤」



まさか今の話…聞かれた!?



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