秀才男子は恋が苦手。
「こんな急激に成績アップしやがって、どんな勉強やってんだ?誰かに教えてもらってんのか?」
「それは…」
返却された自分の小テストに夢中で、ざわめいている教室の中。
おそらく俺だけが、その2人のやり取りに聞き耳を立てていた。
「…いえ、一人で、やってます」
衛藤の声が、なぜかそこだけ、俺の中でやけに大きく響いた。
…は。何だそれ。
俺との毎日は全部、なかったことになってんの?
「そうか!でもなー、独学だけじゃ限界あるぞ?おっ、そうだ。三神!」
なぜか突然、担任が一番廊下側の端の席に座っていた三神直人を呼んだ。
机に顔を伏せていた三神が嫌々顔をあげる。
「んだよ?」
「お前もうスポーツ推薦で合格決まってんだろ。休み時間とか衛藤に数学教えてやれ。何気に得意だろ、お前」
…何…言ってんだよ、担任?
「筒井?おい筒井聞いてんのかよ?俺はな、打倒!筒井を卒業までの大きな目標に…」
「どけ!」
何やら熱弁している千葉を視界から無理やり退かした。
悪いが、今はそれどころじゃない。