秀才男子は恋が苦手。
「つ、つつるん…!」
「つつるん?」
不思議そうに繰り返した三神が、俺に気付いて意外そうな顔をする。
「あー、筒井か。何、どしたの。お前が自ら会話に入ってくるなんて珍しーじゃん」
「…別に」
チラ、と衛藤を見るとバチ、と視線がかち合って、衛藤が慌てて目を逸らした。
…なんか感じ、悪。
そんな微妙な空気に包まれる俺たちには微塵も気付くことなく、三神が「おーそうだそうだ」と呑気な声を出す。
「筒井、衛藤に勉強教えてやってくんない?俺ここの単元いまいち苦手なんだよねー」
勉強教えてやってくんない?って。元々衛藤に勉強を教えてたのは俺で。後から来たのはお前だろ。何でお前なんかに、そんな―――
って、何考えてんだ俺。
はぁ、と小さくため息をついた時だった。
「いや!!」
隣の席の椅子を引こうとした三神の腕を、勢いよく衛藤がつかんだのは。
「だ、だいじょぶ。私、三神くんに勉強教えてもらいたい!」
―――は?
「え、あ、そうなの?」
時間が止まったような気がした。頭を鈍器で殴られたような衝撃。
茫然と立ち尽くす俺の前で、三神が椅子を引こうとしていた手を引っ込めた。
「そんなら、まぁ。何、お前ら喧嘩でもしてんの?」
「べ、別にそういうわけじゃ…」
「そうだよな。お前ら性格全然違いそーだし。喧嘩するほど仲良くないかー」