秀才男子は恋が苦手。
「じゃ、筒井また後でなー」
なんて飄々とそう言った三神は、まるで何事もなかったかのように数学の解説を再開した。
衛藤は一瞬だけ気まずそうに唇をかんだが、すぐにまた、教科書と睨めっこだ。
…何だこれ。俺は蚊帳の外、かよ。
「つーつるんっ!」
逃げるように教室を出て、廊下を歩く俺の隣に千葉が追い付いてきた。
からかうようなムカつく瞳を俺に向ける。
「…その呼び方やめろ」
「何が“関係ない”だよ。自分からバッチリ参戦してんじゃねーか」
「うるっせぇ」
足を止め、睨みつけた俺を見て、千葉がゴクリと唾をのんだ。
「おっまえ……
分かりやす!何だよその分かりやすく怒った顔!」
ブハハハハ!となぜか爆笑しだした千葉を放置して、俺を歩みを再開した。うるさい。本当にうるさい。心底、うざい。
「うそうそうそ!冗談だって!」
再び俺の隣に並んだ千葉。
「嫌なら嫌って言やいいのに。他の男に勉強なんて教えてもらうな!ってさ?」
「…そんなの俺に言う権利はない」
「あるだろ十分」
千葉が足を止めた。いつになく真剣な千葉の声に、俺もつられて足を止めてしまう。
「あるだろ。だってお前は、亜衣ちゃんのことが好きなんだから」