秀才男子は恋が苦手。




三神直人。


野球部のエースで、確か主将。


惜しくも甲子園出場は逃したものの、三神の実力は県下にも轟いていて、あちこちの強豪大学からオファーがあったとか。

しかも野球だけではなく、確かテストの順位も常に学年上位――だった気がする。


顔もまぁまぁ良い。たぶん。よく分からないけど。


そうそう、たしか野球部の全校応援のとき、活躍する三神に女子が「三神くんって男らしくてホンットかっこいいよね!」と騒いでいた気がする。



“戦国武将って、なんか漢!!って感じでかっこいいじゃん?”



そうか、衛藤も男らしい男が好きなんだもんな。



そう考えると――うん、三神が衛藤の“気になっている人”説、ますます濃厚。



「はぁ…」



思わずため息が漏れて、苦笑した。



さっきからベッドに寝転んで、一人でグルグルと何考えてんだろ、俺。


机の上には、帰り道についコンビニで購入してしまったシュークリームが二つ。



衛藤は来ないって分かってるのに。気づいたら買ってた。本当最近、俺は自分で自分が怖い。



ふと時計を見ると、午後11時に近づいていた。


自分にとっても大事な時期だ。志望校は今のところ、一応A判定をもらってる。でも油断はできない。一分一秒も惜しんで勉強しなければいけない時期なのに。



「……バカか俺は」


さっきから教科書を開く気すら起きないなんて。


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