秀才男子は恋が苦手。




「「あ」」


翌日、朝礼前にトイレに行こうとしたところ、教室の入り口で駆け込んできた衛藤とぶつかりそうになった。


寝坊したのか、いつもと違ってピョンと跳ねた前髪。その下で、衛藤の大きな瞳が気まずそうに歪められたのが分かった。


「…衛と「ちょっと亜衣ー?急に止まらないでよ」


衛藤の後ろで、教室に入るのを妨害された女子が文句を言う。


「…あ、ごめんごめん!」


衛藤はパッと俺から視線を逸らすと、俺の横をすり抜けるようにして教室に入った。


「ていうか亜衣、どうしたのその髪!」

「え、何がー?」


楽しそうに友達と会話している衛藤。俺にはあんなに気まずそうな顔、したくせに。



「…はぁ」



なんだか最近また、頭痛が復活してきたような。


いつまでも衛藤を目で追っているのもバカらしくなって、俺も教室の外に出た。





三神直人が衛藤の好きな人だとして。


特段、何の問題もないはずだ。



三神とはあまり関わったことはないが、特に嫌な奴というわけでもないだろう。彼女がいるという噂も聞いたことがない。(噂には疎いので確証はないが…)


俺と衛藤の間には明らかに気まずい雰囲気が漂っているが、別に、元々大して話したこともなかったクラスメイト。そんな少し前の関係に戻っただけだ。


そう、元から衛藤とは何の関わりもなかったんだと思えば、別に―――




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