秀才男子は恋が苦手。
…ギシ、と心臓が軋んだ音がする。
「…かーッ、何あれ、ラブラブか…よ…」
ガタッと突然立ち上がった俺に、千葉が動きを止めたのが分かった。
「おい筒井、何…」
まっすぐ二人に向かう。
無理だ、と思った。
無理矢理考えないようにするのも、見ないようにするのも、我慢するのも。
俺はもう、衛藤のことを考えずにはいられないし、気付いたら目で追ってるし、目の前で他の男に触られてんのは
「無理だから」
パシッ…
突然手首をつかまれた三神が、少しだけそのポーカーフェイスを崩した。
「っと、ビックリした。何だよ急に?無理って?」
「悪いけど触らないで。俺のだし」
三神から手を離して、今度は衛藤の腕をつかみ、無理やり立たせる。
「…え…え?つ、つつるん…!?」
「…来て」
クラス中の注目が集まっているのが分かる。でももう、そんなことどうだって良かった。
「筒井ぃ~!頑張れよ~~!」
そんな千葉の楽しそうな声援が後ろから聞こえる。
俺は衛藤を教室から連れ出して、真っすぐに廊下を進んだ。