秀才男子は恋が苦手。
「謝るくらいなら何で、俺のなんて言ったの…?」
絶対怒っていると思っていた衛藤は、怒っているというより、すごく悲しそうに見えた。そりゃそうだ。三神の前で“俺の”だなんて言われたことが、よほどショックだったんだろう。
「それは、本当にごめん。三神には後で俺から…」
「だから!」
衛藤が声を荒げた。
衛藤が声を荒げたことなんて初めてで、思わず口をつぐむ。
「謝らないでよ!私は嬉しかったのに…私だけ浮かれて…私だけ好きで…
バカみたいじゃん!」
クルリと衛藤が踵を返した。
「衛藤っ…!?」
そのまま走り去っていこうとする衛藤を反射的に呼び止めると、足を止めた衛藤がキッと涙目で俺を睨みつけて
「つつるんのバカー!!」
それだけ立ち尽くす俺にぶん投げて、今度こそ走り去っていった。
ば、バカって…
いや、ちょっと待て。その前。その前だ。
俺はうまく回らない頭で無理矢理、振り返る。
衛藤の発言で、大きな違和感を感じた箇所が一つある。
“私だけ…好きで”
俺の文脈の理解が間違っていなければ、俺のことを好きなように聞こえた…のだが…
いやいやいやいや待て。早まるな俺!