秀才男子は恋が苦手。
秀才男子は混乱する。




昔から勉強は満遍なく出来たが、現代文だけはあまり好きになれなかった。



“この文章から読み取れる、作者の心情を答えなさい。”



明確な答えも、公式も、論理的思考も存在しない。


なんて曖昧で漠然とした問い。



作者の心情なんて作者に聞けよ、と何度思ったことか。




でも、今になって思うんだ。



もっと真面目に現代文を勉強しておけば、衛藤の言葉の意味を、もっと正確に理解できたんじゃないかって。






「…い、筒井?」



は、と我に返ると、俺の前席に座った千葉がじっと怪訝な眼差しを向けていた。


「何回も呼んでたんだけど。ボーッとしてどうしたんだよ」


「…別に、どうも」


「本逆だけど」


「…っ」




俺は静かに開いていた本を閉じ、机の中にしまった。

そんな俺の様子を見て、はぁ~と呆れたようなため息を吐き出す千葉。



「昨日、亜衣ちゃんを教室から連れ出した時から明らかに様子おかしいよな」


「………」


「しかも、告ってないって何なんだよ。あんなカッコイイ連れ去り方しといて何しに行ったんだよお前は!少女マンガだったら確実に告ってるぞ!?確実に!!」


「…お前少女マンガとか読むのかよ」


「当たり前だ!夏海は昔っから少女マンガが好きだからな!夏海の好きな少女マンガはとっくに把握・読了・分析済だ!」


そう言ってなぜか胸を張る千葉。相変わらずコイツは彼女バカだ。つーか最後の分析って何だ…。


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