秀才男子は恋が苦手。
「……筒井」
「なんだよ」
俺を真っすぐ見つめて、真剣な口調で千葉が言う。
「お前ほんっと、恋愛に関してはまるでクソだな」
「……は?」
く、クソ…?
そんなことを言われたのは人生で初めてで、思わず呆気にとられる俺に千葉が続ける。
「そんなに亜衣ちゃんのこと好きなくせに逃げ回って、あげく他の男に近づかれてさ。それでも男か?お前」
「……う、うるさい。誰もが千葉みたいに、自分の思った通りに行動できるわけじゃない。ほら、そんなこといいから次の問題…」
「賢いぶるのもいい加減にしろよ!」
俺を遮った千葉が、いらついたようにシャーペンを置いた。
「全部分かってるフリして、結局何も分かってないじゃん、お前。亜衣ちゃんの気持ちも、何も分かんないまま逃げ回ってるから、諦められないんだろ?
相手に気持ち伝えるのはそりゃ怖いよ。分かるけど、ちゃんと伝えなきゃいけないときもあるんじゃねーの?」
「…それ以上その話するなら帰れ」
俺の言葉に、千葉が息をのんだのが分かった。
「…わかった。帰るよ」
机の上の参考書とノートを乱暴にカバンに突っ込み、千葉が立ち上がる。
「…筒井。言っとくけど、あんまグダグダしてると時間切れになるからな」