私だけの場所。
1-4〜先生視線〜
「あれ?渡辺先生、これから面談ですか?」
なんて、冷房が効いた職員室から出て足を1歩動かした時。背後から声がかけられ少しウザったく、聞こえなかったことにして歩き去ろうとしたが声の主は学年主任。そうもいかず振り返る
「はい、そうです。神崎のご両親と少し……」
「え?神崎さんの?でも神楽さんって、三者懇談……来れないって……」
「まぁ、はい。そうですね……あ、主任。生徒指導室の冷房入れたんで、使わせてもらいます。」
そう伝えると。普通、冷房入れる前に聞くんじゃないの!?なんて聞こえてくるが、時間なんで!と背を向けて歩く……じんわり汗が滲む8月の夏休みの終わり頃の三者面談。
「失礼致します。」
そう言って入ってきたのは少しほっそりとした神崎の母親。やはり親子。神崎は母親似なのだろう。そう思いながらも椅子から立ち上がり挨拶して椅子をすすめる。
「本日はお忙しい中ありがとうございます。」
「いえいえ、とんでもないです。三者面談がある事をお電話頂いてありがとうございました。娘ったら……私に何も言わないですから」
「そうなんですか、さて、お母さん……娘さんのことでなにかご心配なこととか、聞いておきたいこと、何かありますか?」
なんて、聞いてみれば少し視線をさまよわせ俺を見て照れくさそうにほほ笑む
「娘は……千夏ちゃん以外の友達……いますでしょうか?」
「んー。そうですねぇ……彼女は、よく佐藤と一緒にいますが……結構クラスからも人気がある方だと思いますよ?アイツ、あぁ見えて世話好きみたいなとこありますし、それとなくサポートに回ったりするところを結構目にします。本人は無意識のうちだと思いますが……俺ら教師も助かってますよ、まとめ役。みたいな?」
「それわ良かった……」
なんて、安心した顔の母親に俺は苦笑する。
「ただちょっと問題がありまして……」
「問題……ですか?」
「あぁ、問題を起こした。とかじゃないんで安心してください。アイツ……たまに寂しそうな顔でどこか遠くを見てるんですよ。私的には……そうですねぇ。誰かと仲直りしたそうな……自分の発言を悔やんでる……みたいに?」
なんて、そっと母親の前に紙パックの紅茶を出す。それを見た母親は苦笑して紙パックを手に取る。
「すみませんねぇ……こういう時はお茶か珈琲だと思ったんですが……あいにく今はこれしかなく……」
「いえ、ありがとうございます。私……珈琲飲めないので……」
なんて苦笑する母親に少し微笑んでしまった。