紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
用意された部屋で、着ていた白無垢の角隠しを頭に着けていただき、案内をしてくれると言ったお義母様を呼んだ。

「あらあら、とても良くお似合いの白無垢じゃない。流石は藤田屋だわ。」

「ありがとうございます。」

緊張のせいか、少しうわずった声で答えると、お義母様が振り返り、目があった。

「センさん。初めての家で初めて会う人と初めての祝言が、緊張するのはわかりますよ。けれど、あなたの最初で最後の晴れ舞台です。主役であるあなたが、胸を張らずにどうするのですか。せっかく、美しい白無垢を着て、美しく髪も結わえて貰って綺麗な角隠しを着けているんですから、もっと自信をお持ちなさい。今日は、人生であなたが一番輝く日ですよ。お着物に負けないくらい、あなた自身が笑顔で美しくないと。」

お義母様に、ピシャリと叱られた。
すると、次の瞬間フッとお義母様が笑顔になられて、私の頬に手を当ててきた。

「って事を私も嫁いだ時にお義母さんに言われたわ。私達、似た者親子になるかもしれませんね。」

私の頬を撫でながら、可愛らしく少女のように微笑むお義母様の優しさが、その指先から伝わってきて嬉しくなった。
(あぁ、この家なら私はしっかりとやっていけるんじゃないかしら)
そう思うと、少し安心して気持ちが楽になった。
目をつむり深く息を吸って、ゆっくりと吐き出し目を開けた。

「はい、もう大丈夫です。ありがとうございます。」

私が言うと、お義母様は頷き、ゆっくりと廊下を歩き始めた。

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