紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
屏風の前に腰を下ろし、“センさん”がくるのを待った。

「…なぁ、兼義、“センさん”の部屋はあるのか。」

今まで、父や母に彼女についてのことは任せてきたので、まるっきり何も知らない私は兼義に聞いた。

「あるよ、優作の部屋の隣の部屋だ。一緒に離れで暮らすんだぞ。既に荷物も運び込まれてる。って言うか、何でこの家に住んでない俺の方が知ってるんだよ。」

「え、そうか。父さんも母さんも離れで暮らしてたしそうなるのか。離れで二人っきりかぁ。」

うちには、母屋と離れがあり祖父が亡くなったのを期に父と母は、母屋に移った。
現在離れで暮らしているのは私だけだ。

離れと言っても渡り廊下で繋がっているし、食事も母屋で一緒に取っているので、自分の部屋が離れにあるだけでほとんど母屋で過ごしていると言っても過言ではない。
「なんだよ、奥様が『ずっと一緒だとお互いに気疲れしてしまうから、部屋は別々であっても良いわね。』って言うからお互いの部屋は、別になったのに不満でもあるのか。」

兼義が、目を細めて聞いてきた。

「不満はないさ。ただ、二人っきりと言うことに不安はある。」

離れと言っても母屋ほどの大きさは無い。

離れの玄関を入ってすぐ隣に台所と、正面に土間。台所と襖1つで仕切られた居間があり、その奥が廊下だ。この廊下は、離れの玄関から母屋への渡り廊下をつなぐ廊下で、廊下の奥が渡り廊下に近い方から私の部屋と、隣の空き部屋、そしてお風呂だ。

普通の家と対したいして変わらない作りになっている。

この、狭い離れで彼女と二人きりという空間に不安を覚えるのは私の性格上正常なことだ。
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