紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
「藤田さん、息子の優作です。優作、こちら藤田さんご夫婦だ。挨拶しなさい。」

父に促され私はお二人に、挨拶をした。
「優作です。はじめましてお義父さん、お義母さん。遠いところを、ようこそお越しくださいました。」

「はじめまして、優作君。君の話はお父上から聞いているよ。洋薬に詳しいんだとか。センの事を宜しく頼むよ。」

お義父さんは、眉一つ動かさずに言った。

「はじめまして、優作さん。センの母の伊織です。これから、家族になるんですから仲良くしましょうね。」

お義母さんは、とても優しそうな人だった。

母は、“センさん”を準備をする部屋に案内していて、ここにはいなかったが両家の親子が初めて顔を合わせた瞬間だった。

しばらく、お義父さんとお義母さん、、そして父の4人で雑談をしていると、女中がそっと襖を開けた。

「大変おまたせいたしました。セン様のご用意が整いましたので、これからこちらにご案内致します。」

失礼します、と言って女中は襖を閉めた。

「ああ、ついにか。では、私は母を呼んできますので、みなさんは待っていてください。」

父は、別の部屋で待っている祖母を呼びに行った。

祖母は、数年前まで現役で店に立っていたが、足を悪くしてからは現役を退き、屋敷で隠居生活を楽しんでいる。

隠居生活と言っても、今まで仕事ばかりでできなかった自分の趣味である、庭弄りや盆栽などに没頭して時より隠居仲間を呼んで、自慢の庭や盆栽をみんなで楽しみながらお茶をするなど、悠々自適の生活を楽しそうに送っている。

年の割に元気なおばあさんだ。

少しして、祖母が父につれられて部屋に入ってきた。

祖母は、父の手を借り足を引きずりながらではあるが、藤田家のご夫婦の元に行き挨拶をかわした。

元来、細かい事は気にしないあっけらかんとした明るい性格なので、藤田家のご夫婦とも仲良くなれるだろうと思っている。

挨拶をすますと、今度は私の前に座りシワシワの手で私の手を握り、「おめでとう、優作。」と、可愛らしい笑顔を見せてくれた。

「ありがとう、お祖母ちゃん。」

私もつられて、笑顔になり少しだけ緊張が取れた。

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