紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
華やかで可愛らしい噂通りの美人だった。

凛とした顔立ちで、スッと通った鼻筋も紅で彩られた薄い唇も、西洋人のようなクリっとした目も何もかもが私では釣り合ってないと教えている。そう思うと、私の方から目をそらしてしまった。

(こんな美しい娘が、私の妻になるのか。まるで、月とスッポンのようだろうな。)

美人の娘を嫁にもらって素直に喜ぶことの出来ない自分に嫌気がさす。

(せめて、彼女が不幸だと思わないようにしなくては。)

どこか、責任めいた感情を覚えた。これが、こんな男の元に嫁がせてしまった事への罪悪感から、来るものである事を私自身理解していた。

彼女が、部屋に入ってきて私の隣に用意された座布団に腰をおろした。

私は、祝言中ずっと正面だけを見続けていた。彼女は、何度かこちらを伺うような素振りをしていたが私は、隣を向くことはできなかった。

祝言が、終わり立て続けに宴会が催された。
その間もずっと正面だけを見ていた。

とてもじゃないけど、むず痒い左側に目をやることは出来なかった。

日が傾き始めた頃、藤田家のご夫婦が帰られるということで宴会は、と開きになった。

緊張のせいか、私はほとんど何も口にできなかった。

隣にいた彼女も、何も口にしていなかった。

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