紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
思いもよらない発言に、重大な事を告げられるのではと構えていた私は、(なんだ、そんな事か。)と思ってしまった。

「勿論、平日は優作と二人で過ごしてもらって構わないわ。その方がセンさんも変に気を使わなくて済むでしょ?私も平日は、お店が忙しくてお料理は女中に任せているし台所に立つのは週末くらいなの。センさんがお料理がしたければお台所を使ってくれて、構わないし、忙しいときは女中に頼めば母屋から運ばせるわ。だめかしら?」

お義母様は、私に気を使わなくて良いと言ってくれている。

そもそも、私は一緒の屋敷で暮らすつもりで嫁いできたのだ。離れがあるなんて知らなかったのだから。

離れで、夫婦二人の時間を作ってくれようとして、嫁いできた嫁にまで気を使えるお義母様は、とても優しく素敵な人に思えた。

「お義母様、私お料理をするのは大好きです。けれど、優作さんの好きな味付けも好きな料理も知りません。もし、お義母様さえ良ければ私に野崎家の味を教えて貰えればと思います。」

お義母様の優しさが嬉しくて、笑って答えるとお義母様の顔がパァと華やいだ。

「本当に?週末を母屋で過ごしてくれるの?」

「はい、私も野崎家のみなさんと家族になりたいです。」

お義母様はありがとうと言ってホッとした様子だった。

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